名言って結構好きです。
その人の人生の軌跡が感じられるような言葉が好きです。
浮ついたものはいけません。
愛は勝つ」とか「正義は勝つ」とか、「想いは通じる」とか、、、
受験浪人生の時、英文を翻訳する勉強をしていた時”fruitful monotony"というフレーズが出てきて、どう訳したものか困ってしまいました。
前後の文章にピッタリとくる訳が見つからなかったのですね。
しばらく考えてふと、「実り多き単調な生活」と訳すといい感じなのです。
我ながら「おお、やるじゃん」とうれしくなったと同時に「実り多き単調な生活」という言葉にグッとくるものを感じました。
毎日毎日、机に向かって、同級生たちが彼女を作って楽しそうにしているときでも机に向かって、、、
「自分はなんてつまらない人間なんだろう」と思っていた時に出会った言葉に随分励まされたものです。
言葉って時に人を支えてくれますよね。
母が自分に言った言葉で忘れられないのは「手は何度でも洗えばいい」というものです。
文字通り、私が手を汚すことを嫌った時に言われたのですが、私はもっと抽象的な意味と捉えました。
つまり自分の引っ込み思案な性格に注意を与えられたと。
失敗は誰だって怖い。
だからと言って何もしなければ、何も始まらない。
怖くても行動をしなくてはならない時もある、いや、社会に出るとそんなことばかりです。
失敗を恐れるなという意味として、今でも時に自分に言い聞かせます「手は何度でも洗えばいい」。
さて、つい先日、患者さんから聞いた言葉にグッときました。
その患者さんはワンちゃんの病気治療に鍼灸を使う動物病院に通っていらっしゃるんですね。
その獣医師さんは、ワンちゃんねこちゃんの治療を突き詰めていった先に鍼灸と出会い、いまではその先生の治療予約をすると「人間ですか? ワンちゃんですか?」と聞かれるそうです。
キテマスヨネ〜、、、
で、ご自分のワンちゃんの治療が終わって、次のお客さんが老犬を連れてきたそうです。
その方は正統的な獣医師としての治療を望まれていたにもかかわらず、その先生いきなり鍼を持ってきてワンちゃんの後頭部にグサッと鍼を刺されたそうなんです。
びっくり仰天している飼い主さんに対して言われた言葉が、、、
「鍼は副作用がないからね! 下手な鍼を打っても効かないだけで、体に悪いことなんかないからね!」
下手な鍼を打っても効かないだけ、、、、、
ちょっとクラッとしました。
いいなぁ〜、、、まるで仙人みたいだ。
鍼灸師も患者さんに針を刺すのは怖いのです。
いつまでたっても怖さは消えません。
ひとつには失敗したらどうしようという気持ち。
それから効かなかったらどうしよう。
その”効かなかったらどうしよう”という不安が強いと、ついやりすぎてしまうのです。
やりすぎてしまうと刺激が強すぎるのですから、患者さんにとっていいわけがありません。
やりすぎないように、適度な刺激で終えることができるかどうかが、鍼灸師としての技量の差だったりするのです。
私も17年鍼灸師をしていますが、このちょっと足りないくらいで治療をやめることに、内面で不安と戦っているんですよ。
「下手な鍼打っても効かないだけ」と割り切れるようになるまで、私は後どれだけの修業がいるんだろう、なんてことを考えてしまいました。
いつもこのブログで「肩の力を抜く」だの「脱力できる体だけがフルパワーを出せる」などと偉そうなことを言ってますが、私も本当に肩の力が抜けた会心の鍼をいつでも打てるようになりたいです。
でもあんまり「下手な鍼を打っても、、、」と思い続けるのも、なんだか無責任な人間になってしまいそうで怖いですね。
ほどほど、、、何事もほどほどが一番ですね。
はり・温灸治療院 楽居堂 IN 世田谷・経堂
http://www.chiryoin.jp